■雨上がりのおくりもの■
夕方、みきちゃんが友だちのまみちゃんの家を出ると、空が急にくらくなって、雨がふり出しました。
「どうしよう。カサもってこなかったよー」
「じゃあ、わたしのカサ、かしてあげるよ」
みきちゃんがこまっていると、まみちゃんがカサをかしてくれました。
みきちゃんがそのカサをさして家までのかえり道をあるいていると、一人のおばあさんが雨にぬれながらあるいてきました。
おばあさんはみきちゃんとはんたいのほうこうにあるいていたので、みきちゃんはどうしようかなとおもいました。
でも、おばあさんはとてもさむそうにしていたので、みきちゃんはおもい切って声をかけました。
「おばあさん、どこまで行くの? そこまでみきのカサに入れてあげようか?」
するとおばあさんはやさしいえがおでこたえました。
「ありがとう。でも、おじょうちゃんのお家ははんたいのほうではないの?おばあさんは大手町(おおてまち)こうえんまで行くんだよ」
「いいよ。みき、おくってあげる」
みきちゃんはすぐにそう言って、カサの中におばあさんを入れてあげました。
「ありがとう。お名前、みきちゃんって言うの」
おばあさんはみきちゃんがさしてるカサの中に入ってききました。
「うん、そうだよ。でもどうしておばあさんはこうえんに行くの? 雨ふってるのに…」
みきちゃんはおばあさんといっしょにこうえんのほうにあるきながらききました。
「それはね、こうえんで、たからものをさがさなくてはいけないからだよ」
みきちゃんはおばあさんの話をきいて、たからものってなんだろう…と、とてもきになりました。
「たからものってなあに?」
「それはひみつ。こうえんまで行ったらわかるよ」
みきちゃんははやくたからものが何なのか知りたくてたまりませんでした。
「ねぇ、みきにもたからもの、見つけられる?」
「さぁ、もしかしたら、みつけられるかもしれないねぇ」
みきちゃんは、わくわくしながらこうえんに行きました。
こうえんにつくと、雨がやんだので、みきちゃんはかさをとじました。
さっきまで雨がふっていたので、こうえんにはみきちゃんとおばあさんのほかにはだれのもいませんでした。
「おばあさん、たからものはどこにあるの?」
みきちゃんはおばあさんにききましたが、おばあさんはたからものをさがそうとしないで、そのそばに立ったままでした。
「たからもの、さがさないの?」
みきちゃんはもう一度おばあさんにききました。
「わたしのさがしていたたからものはね、みきちゃんみたいなやさしい心を持った子のことだよ」
みきちゃんはおばあさんのはなしをきいて、少しがっかりしました。
おばあさんはそんなみきちゃんを見て言いました。
「みきちゃん、手を出してごらん。」
みきちゃんが両手を出すと、おばあさんはきまちゃんの手の上に、うずらのたまごくらいの大きさの、むらさき色のキレイな石をおきました。
「うぁ~、キレイな石! これ、なぁに?」
「これはにじの石だよ。これからみきちゃんがみんなにしんせつにするたびに、この石は1つずつふえていって、石がにじと同じ7つの色がそろったとき、みきちゃんはしあわせになれるんだよ」
「ほんとー? みき、がんばるね。でも、ほんとうはこのカサ、きまのじゃなくて、お友だちのまみちゃんのなの。さいしょにまみちゃんがカサをかしてくれたんだよ」
みきちゃんはじぶんだけがたからものをもらって、ちょっぴりまみちゃんにわるいような気がしました。
「そうなの。それじゃあ、そのまみちゃんにもあげなきゃね。二人でいっしょにあつめてね」
そう言っておばあさんはもう一つの石をきまちゃんにわたしました。
「みきちゃん、あっち見てごらん!」
おばあさんが指をさした空を見ると、キレイなにじがかかってました。
「きれいなにじだぁ!」
みきちゃんがそう言ってふりむくと、もうそこにはおばあさんのすがたはありませんでした。
☆おわり☆
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